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地面の下の話
2009年7月 芳賀

 私は 地面の下、地質に興味をもっています。お盆ですので、謂わば黄泉(よみ)の国。とは言っても、温泉では深さで 精々(せいぜい)1キロ〜2キロ。 地球の半径6400kmに対して 1km〜2kmです。 2階建の家の 僅か1〜2 mm。 日本の石油の掘削技術では 5〜7km位、世界では なんとロシアが一番進んでおりまして 約12km、 そしてアメリカが 11km位です。人間もその位までは掘る事ができるし、手にとって見ることができる。 それでも 2階建ての内の1 cm程度です。

 われわれ人類の実力は 今の処 この程度。 たったの 6400分の 10です、640分の1。そして、見えないところは如何に 難しいか。地球深部の直接的な情報は、 今のところ波の伝わる速さぐらい。たったそれだけ。 また、地質をやる人が、やりたい人が 本当に少ない。 特に日本では、 みなさん地上のこと ばっかり、まァ お金のことばっかり。 若い人をスカウトしたいくらいです。ちょっと人と違うことをやるのもいいですよ。

 さて 愚痴から入りましたが、私にとって 地質をするという事は どういうことなのか? それはまず、 一つには 日常とはかけ離れた感覚にふれる と云う事があるみたいです。 地球という、その ほんの一部ですけれども、宇宙の 悠久のリズムのその ほんの一部を 体感したい。 テカ
最近 地球の温暖化で、( 本当に 地球は温暖化しているのでしょうか? よくある 気温の変化というべきではないでしょうか? よくわかりません ) 山岳氷河の後退とか、 はたまたジュラシックパークだとか 話題になりますが、 そこでは 数万年前とか 数千万年前とか云う数字がごくあたりまえのように出てきます。でも みなさん実感をもってその年数を聞いているわけではないでしょう? 私も昔4億年前の化石を採っておりましたが、その年数を実感をもって使っていた訳ではありません。ひとつの時間軸の記号として 順を追う座標として使っているだけで、人生 70年との比較で その数字を話している訳では無いのです。少なくとも私の場合 地質的な年代に 実感は伴っていないのです。

 しかし その途方も無い時間とスケールの中で( 実感は伴わないのですが )、 地球は、私たちの日常とは まったくかけ離れた挙動をしているらしいのです。性質を持っているらしいのです。 たったの6400分の10ですけど。それがおもしろいし たのしい。

 太陽系・第三惑星として 宇宙に浮かぶ地球は、そとから見ると 殆んどまったくの球体であります。 無重力の空間に浮かぶ水滴のように、 地球は液体であります。月から見たかぐやの映像は実に美しかった。自分の引力に規制され 球をかたち造る水滴のように、地球は宇宙に浮かぶ液体であります。 つまり、人がみるほどに、地球は硬くなくて、山は山ではありませんし、谷は谷でありません。そして 海も その海底も まったく平らな地球表面の一部でしかありません。まったくの球、表面がすこし固まった程度の球体。山岳だとか海溝だとか 教科書的に凹凸があまりにも誇張されていて、その実態が逆に見えなくなっています。人間での目線で、日常の感覚で、地球を見てはいけないのです。見失ってしまうのです。 スケールでも 時間でも。

そして、普段は 非常に硬くて、ハンマーで叩くと火花の出るような岩盤も、( 長い時間かかって? ) 飴のように曲がっていたり、うねったりしています(撓曲(とうきょく))。 勿論 断層などで しょっちゅう切られてもいます。こんなダイナミックなことが 地質の世界では極く普通に 起こっているようなんです。 そんな世界です。たぶんこの地質の世界は。 対象を見るには、その対象のセンスを まず体感せよ。デス

そして、このような地球の大地の表面と大気の底の間で、われわれ人間は生き延びているわけです。でも 通常の種としての平均寿命はもうとうに過ぎているようなのです。地球の 固体と液体と気体とが接するこの特異な境界で、かろうじて今 レリックとして生きのびています。この奇跡的な生命たち。 地質はその足元と歴史を学びます。

“ 言葉の無かった長い世紀の豊かな沈黙、あらゆる天性と豊かな感受性とが 大いなる沈黙の中に蓄積されていた頃、人間達の表情は 今よりも深々としていたのではないだろうか ”

以上 思いつくままに

 
       



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